《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
公表出来ない。即ち、その国にとっての重要人物だと言う可能性が高い。
「……そうだったのか。なら今更かもしれないが、何か俺が力になれそうな事があれば…」
「無いわ。この国での収穫はゼロよ。だから一旦国に戻ることにしたの。さあ、あたしは話したわよ? それで、ライア。貴方は何者なの? 唯の旅人って訳じゃあなさそうよね」
エリィからの問いに、ラインアーサは残りの果実酒を一気に煽ると気を引き締めた。
「ああ。俺も全てを話す事は出来ない。でも俺は生まれも育ちもこの国だ」
「そうみたいね。見た所ライアのその髪の色だって珍しいみたいだけど?」
「ん? ……あ、ああ。珍しいだろ…」
髪の色を指摘され小さく動揺する。
実のところ、シュサイラスア大国でこの髪の色を持つのはラインアーサとイリアーナのみである。両親からの髪色が混ざり合ったのか隔世遺伝の表れなのか、二人共ミルクに焦がし砂糖を垂らした様な風変りな茶色の髪だ。だが公的な場に出る際には、正装としてやけに重たい飾り帽を被る事が殆どだ。
おかげで遠目からしか自分の姿を見たことがない者からすれば、〝アーサ王子〟は単なる茶髪に見える筈なのだ───。
「……そうだったのか。なら今更かもしれないが、何か俺が力になれそうな事があれば…」
「無いわ。この国での収穫はゼロよ。だから一旦国に戻ることにしたの。さあ、あたしは話したわよ? それで、ライア。貴方は何者なの? 唯の旅人って訳じゃあなさそうよね」
エリィからの問いに、ラインアーサは残りの果実酒を一気に煽ると気を引き締めた。
「ああ。俺も全てを話す事は出来ない。でも俺は生まれも育ちもこの国だ」
「そうみたいね。見た所ライアのその髪の色だって珍しいみたいだけど?」
「ん? ……あ、ああ。珍しいだろ…」
髪の色を指摘され小さく動揺する。
実のところ、シュサイラスア大国でこの髪の色を持つのはラインアーサとイリアーナのみである。両親からの髪色が混ざり合ったのか隔世遺伝の表れなのか、二人共ミルクに焦がし砂糖を垂らした様な風変りな茶色の髪だ。だが公的な場に出る際には、正装としてやけに重たい飾り帽を被る事が殆どだ。
おかげで遠目からしか自分の姿を見たことがない者からすれば、〝アーサ王子〟は単なる茶髪に見える筈なのだ───。