《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……エリィはそれを使えるのか?」

「当然よ。ルゥアンダ帝国はこの十年の間、様々な魔像術(ディアロス)の発展だけ(・・)に力を入れてきたわ。身を守る魔像術(ディアロス)はもちろん、他人を傷つける術…。それに今はもっと恐ろしい魔像術(ディアロス)にまで手を出しているわ…! 空間移動の術なんて最早お手の物よ。ね? 平和主義のこの国の民に魔像術(ディアロス)なんて必要ないでしょう?」

 此方を見ながら自虐的に笑うエリィに、ラインアーサは意を決した。

「なあ、エリィ…! 一度ルゥアンダ帝国に帰るにしても、何かあったらいつでも言ってくれ。俺でよければ力になりたい」

「っなに……言ってるのよ。貴方には貴方のやるべき事があるんじゃあないの? だって貴方は…」

「困ってる時はお互い様だろ? 特に、人捜しをしているなら協力は惜しまないよ」

 (かつ)ての自分と同じ様な状況ならば、尚更見て見ぬ振りなど出来ない。ラインアーサは真剣な眼差しでエリィを見つめた。

「はあぁ…。あたしったらなんで貴方にこんな話しちゃったのかしら。これ帝国の極秘情報なのよ? 解ってるとは思うけど絶対に他言しないで頂戴」

「ああ、勿論。分かってるよ」

 逃げる様にラインアーサから目を逸らすエリィ。
< 168 / 529 >

この作品をシェア

pagetop