《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ラインアーサはあやす様にスズの背中を優しく叩き、そう諭す。しゃくり上げながら、(すが)る様な瞳で見つめてくるスズ。

「……ここにきたら、ライアおにいちゃんに、またあえる…? いっしょに……パパを、さがして、くれる?」

「うん、毎日ここで待ってる。ああ……そんなに泣いたら駄目だよ。ほら、涙が止まるおまじない…」

 そう告げて、ラインアーサはスズの(まぶた)に口づけをした。
 横でセィシェルが何か(わめ)いているが聞こえない。スズがまたあの笑顔を見せてくれたことで、ラインアーサの胸は一杯になったから。


 ───

 ──────


「……ラ…ア!  …ライア!!」


 ────やけに身体が揺れる。
 規則的な音と揺れがラインアーサを微睡(まどろ)みの世界へと(いざな)い閉じ込めようとする。

「ライア!! そろそろ起きてください」

 しかし、今度は耳元で大声を上げられ流石に現実の世界へ引き戻された。ぼやけた目をこすり、周囲を確認すると呆れ顔を浮かべた人物が視界に入ってくる。
< 17 / 529 >

この作品をシェア

pagetop