《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 確かに純血を守ってばかりでは、リノ族はここまで繁栄していなかっただろう。
 他種族と交わるのは至極当前の流れだ。

「しかしながら、光のパルフェと闇のルゥアンダ、小フリュイ公国の公族に限っては他種との交わりを避け純血に近いまま種を残してきているのです。故に術の潜在能力が高く、代わりに人口は少なく希少とされてます。一般の民には例外もおりますが、それぞれの血筋が濃いのです」

「まあ、シュサイラスアは特に色々な人種が移住してきて暮らしてるもんな。ご先祖様の血はだいぶ薄くなってるんだろうな」

「そうなのですが貴方様のご両親。陛下は勿論シュサイラスア氏の直系であり、末裔でございますね。そしてお母上のエテジアーナ様は煌都パルフェの御出身だったかと…。加えてパルフェ・フロプシィ氏の直系の末裔ではないのですが、不思議な事に古代リノ族に近い潜在能力を秘めておいででした」

「……そう、なのか…」

 ───古代リノ族。
 ラインアーサは何故か妙にその単語が気に掛かった。

「ええ。ですから貴方様はシュサイラスア氏の末裔にして、パルフェ氏の特徴も色濃く受け継いでおります。向こう見ずで他人を放っておけない献身的な気質は、それが所以(ゆえん)かと」
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