《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「いいえ」
時刻を確認すると、とうに日付が変わり更に数刻も時間が経っていた。
古の術の事についてはそれとなくにはぐらかされた様に感じたが、古代リノ族の事と一緒に調べる時間を取る事にしよう。
「色々教えてくれてありがとう。助かったよ!」
「礼には及びませぬ。そもそもラインアーサ様が授業を怠ったのがいけないのですから」
「もう分かったって! 説教も今度聞くよ。あと、 蜂蜜茶ご馳走様」
ラインアーサは長椅子から立ち上がると、早々にジュストベルの部屋から立ち去った。
自室に戻り寝支度を済ませるとやはり目が行くのは寝室の出窓から見えるあの森だ。森はざわつく事もなく、しんと静まり返っている。
───スズランはゆっくりと休んでいるだろうか。
ラインアーサはベッドに身体を投げ出すとスズランの笑顔を思い出し、緩む表情を枕に押し付け叫び出したいのを堪えた。あの笑顔は紛れもなくラインアーサに向けられたのだ。
旧市街の事。ハリの事。エリィの事やルゥアンダ帝国の現状。空間移動の術や、古代リノ族の事……考えたい事は山ほどあるが、ほんのひと時だけでもそれを忘れラインアーサはスズランの笑顔に胸を躍らせた。
時刻を確認すると、とうに日付が変わり更に数刻も時間が経っていた。
古の術の事についてはそれとなくにはぐらかされた様に感じたが、古代リノ族の事と一緒に調べる時間を取る事にしよう。
「色々教えてくれてありがとう。助かったよ!」
「礼には及びませぬ。そもそもラインアーサ様が授業を怠ったのがいけないのですから」
「もう分かったって! 説教も今度聞くよ。あと、 蜂蜜茶ご馳走様」
ラインアーサは長椅子から立ち上がると、早々にジュストベルの部屋から立ち去った。
自室に戻り寝支度を済ませるとやはり目が行くのは寝室の出窓から見えるあの森だ。森はざわつく事もなく、しんと静まり返っている。
───スズランはゆっくりと休んでいるだろうか。
ラインアーサはベッドに身体を投げ出すとスズランの笑顔を思い出し、緩む表情を枕に押し付け叫び出したいのを堪えた。あの笑顔は紛れもなくラインアーサに向けられたのだ。
旧市街の事。ハリの事。エリィの事やルゥアンダ帝国の現状。空間移動の術や、古代リノ族の事……考えたい事は山ほどあるが、ほんのひと時だけでもそれを忘れラインアーサはスズランの笑顔に胸を躍らせた。