《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 その封印は女公の硬い意志で半永久的に閉ざされており、この十一年の間解ける兆候は全くないのだと伝えられている。
 それ程迄に女公の力は高く、どの属性よりも強勢と言われている雷花の神気(トニトフロース・ディオス)を誰もが恐れた。
 悪に手を染めた闇の皇帝が封印された事により、日々起きていた暴動などは徐々に収拾していった。
 ルゥアンダ帝国と結託していたマルティーン帝国はあっさり中立の立場へと手のひらを返し、残された各国との講和条約を結び現在に至っている。その結果ルゥアンダ帝国は孤立し鎖国状態となり、他国との関わりを一切経ったのだ。
 しかし、内乱が終息してもイリアーナの行方は一向に分からないままであった。
 その事がきっかけとなり、元々身体の強くないエテジアーナの病状は悪化。遂には無念のままにこの世を去ってしまった───。

「っ…またなのか? また家族が引き裂かれるなんて! 一体誰がこんな事を!!」

 ラインアーサは焦る気持ちを抑えきれず、イリアーナの部屋へと着くなり扉も叩かず開け入った。

「姉上! 無事かっ!?」

 突然大声をあげながら部屋に入ってきたラインアーサに対し、イリアーナが驚いた様子で此方を見やる。
< 199 / 529 >

この作品をシェア

pagetop