《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「いえ。この五年間ライアが健闘した結果ですから、私は何も」
「なんだよ、本当にそう思ってるんだから素直に喜べって! まあ、あとはお前の家族が見つかれば俺はもっと嬉しいんだけどな。せめて記憶だけでも戻れば…」
ハリは内乱以前の記憶が曖昧だ。
自分の名と双子の姉がいた事は辛うじて覚えているらしいが家族が何処にいるか、自分が何処から来たのかさえ覚えていない。いわゆる記憶喪失なのだ。ハリの容姿からすると、北の果ての地に君臨しているルゥアンダ帝国の人種に特徴が一致する。しかしながらルゥアンダ帝国は内乱後、今現在も鎖国状態が続いており詳細な調査は出来ないままでいた。
「……私は別に。生涯シュイラスアに身を置いても構いませんよ。私こそ、陛下とライアに恩儀を尽くすまでです」
抑揚の無い声でそう話すハリの顔は無表情に近い。
「……」
ラインアーサは親指の先を顎にあて、少し首を傾げた。そして一片の隙もなく、真面目過ぎる態度を崩さないハリの背中を思い切り叩いた。
淡々とお茶を飲んでいたハリが盛大に噴き出す。
「なんだよ、本当にそう思ってるんだから素直に喜べって! まあ、あとはお前の家族が見つかれば俺はもっと嬉しいんだけどな。せめて記憶だけでも戻れば…」
ハリは内乱以前の記憶が曖昧だ。
自分の名と双子の姉がいた事は辛うじて覚えているらしいが家族が何処にいるか、自分が何処から来たのかさえ覚えていない。いわゆる記憶喪失なのだ。ハリの容姿からすると、北の果ての地に君臨しているルゥアンダ帝国の人種に特徴が一致する。しかしながらルゥアンダ帝国は内乱後、今現在も鎖国状態が続いており詳細な調査は出来ないままでいた。
「……私は別に。生涯シュイラスアに身を置いても構いませんよ。私こそ、陛下とライアに恩儀を尽くすまでです」
抑揚の無い声でそう話すハリの顔は無表情に近い。
「……」
ラインアーサは親指の先を顎にあて、少し首を傾げた。そして一片の隙もなく、真面目過ぎる態度を崩さないハリの背中を思い切り叩いた。
淡々とお茶を飲んでいたハリが盛大に噴き出す。