《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「アーサ!? びっくりするじゃあない…。何かあったの? 何だか下も騒がしいから今使いをやろうとしていた所だったのよ?」

「姉上、よかった無事で…! 使いなんていいから、早くリーナを呼んで一人で居るのは避けてくれ! 俺、また姉上が攫われたら…っ」

 するとイリアーナは更に戸惑った様にラインアーサの両肩にそっと手を置いた。

「どうしたの? アーサ、落ち着いて?」

 そう言われて初めてラインアーサは少なからず冷静さを失っていた事に気が付いた。後から追いついて来たハリとジュリアンも、ラインアーサの様子に驚いている。

「はぁ〜っ…やっと追いついた! アーサ、いきなりどうしたんだよ? 心配なのは分かるけど…」

「ジュリ、ハリ君も…。一体何があったの? アーサの様子もおかしいみたいだし」

「……」

 イリアーナの質問に押し黙るとその場に重苦しい空気が漂う。だがその沈黙を破る様にハリが口を開いた。

「イリアーナ様。落ち着いて聞いてください…」

「っハリ、駄目だ! 姉上は…」

「いずれ耳に入ることです。でしたら今ここでお話した方が良いかと」

「でも…」

「アーサ、何があったの?」
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