《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
事件が起きた日と同日。他国に赴く為の主な移動手段である列車の路線はマルティーン帝国の起こした津波により破壊され、その殆どが機能していない状態だった。その為、海を挟む他の大陸に移動する方法は無いに等しい。
しかしながらその裂け目に引き込まれたイリアーナは王宮の中庭から姿を消し、別の大陸にあるオゥ鉱脈都市で匿われていたのだ。裂け目が空間を捻じ曲げていたのは間違いない筈だ。
イリアーナは裂け目に引き込まれた先の空間に包まれた瞬間、酷い嫌悪感に苛まれ意識を失ったらしい。意識を取り戻してからも暫くは記憶が前後し、詳しいことは良く覚えていないとの事だった。
「じゃあ、姉上はその空間の先が何処へ繋がっていたのかは分からないって事か……」
「ええ、そうなのよ。大して役に立てなくて申し訳ないわ」
「そんな事ないよ、話してくれてありがとう。思い出したく無かっただろうに」
イリアーナは静かに首を横に振ると、話を続けた。
「……あの時は何処か薄暗い空間に、何人か集められたわ。おそらくわたしの様に無理矢理連れて来られた人たちだと思うの。記憶は曖昧だけども、中にはまだ幼い子もいたのよ。……今回攫われた子も無事に見つかると良いのだけど」
しかしながらその裂け目に引き込まれたイリアーナは王宮の中庭から姿を消し、別の大陸にあるオゥ鉱脈都市で匿われていたのだ。裂け目が空間を捻じ曲げていたのは間違いない筈だ。
イリアーナは裂け目に引き込まれた先の空間に包まれた瞬間、酷い嫌悪感に苛まれ意識を失ったらしい。意識を取り戻してからも暫くは記憶が前後し、詳しいことは良く覚えていないとの事だった。
「じゃあ、姉上はその空間の先が何処へ繋がっていたのかは分からないって事か……」
「ええ、そうなのよ。大して役に立てなくて申し訳ないわ」
「そんな事ないよ、話してくれてありがとう。思い出したく無かっただろうに」
イリアーナは静かに首を横に振ると、話を続けた。
「……あの時は何処か薄暗い空間に、何人か集められたわ。おそらくわたしの様に無理矢理連れて来られた人たちだと思うの。記憶は曖昧だけども、中にはまだ幼い子もいたのよ。……今回攫われた子も無事に見つかると良いのだけど」