《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 険しい表情でライオネルに見詰められる。しかしラインアーサの望む回答が返って来たことにより、抱えていた憶測は確信へと変わっていた。やはりこの目で一度は目の当たりにした、あの空間の裂け目こそが空間移動の魔像術(ディアロス)なのだと。

「アーサ。くれぐれも言っておくが魔像術(ディアロス)に興味本位で関わっては…」

「わかってるよ、父上。ジュストベルにも忠告されてるしそんなつもりはないよ」

「そうか。ならば良いが……さて、今日はもうお開きにしよう。皆、明日からの役割に備えて休んでくれ」

 ライオネルの一言で各々が部屋を後にし、ラインアーサも退室しようとした。しかしどうしても気になる事があり足を止める。

「父上、もう一つ気になる事があるんだけど…。いいかな」

「なんだい? アーサ」

 ラインアーサはエテジアーナが持っていたとされる、古代リノ族の能力について尋ねようとライオネルに向き直る。しかしライオネルの表情に何時もより疲れが見えた為、日を改めようと思い直す。

「……やっぱり今度でいいかな。だいぶ疲れてるみたいだから今日はしっかり休んでよ。父上こそ何でも一人でこなすし、一体何時休んでるの? ちゃんと寝てる?」
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