《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 やはり先日エリィに指摘された通りなのか。シュサイラスアの民は平穏な生活に慣れきって然して危機感を感じている様子がない。

「まあ、それでも通常時より女性や子どもたちの姿はやや少ないかと思いますが」

 ハリが冷静に街の様子を眺めて分析する。

「確かにそうですね……」

「言われてみればそうかもしれないな。この時間帯ならもう少し人が集まっていてもおかしくないな」

 確かに、普段なら広場の噴水や果実店の周辺には子どもたちや親子連れが多く見られる。だが、今日はそれ程その姿を見かけない。しかしそれを除けば至極平穏であり、街並みと人々の営みは変わらず緩やかに時間が流れていった。

 ───街の時計台が夕暮れを告げる鐘を空に響かせる。夕刻に一旦集合することになっている為、ラインアーサたちも所定の場所へ足を運ぶ。普段と特に変わった様子は見られない為、報告もすぐに済むだろう。恐らく、ジュリアンやその他の班も似た様な結果に違いないのだろうと思っていたが。
 集合場所に着くと、先に到着していた隊員たちの様子がおかしい。隊員たちはどうにも落ち着かず、そのうちの何人かは酷く項垂れている。
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