《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 俯く隊員の中にはジュリアンも含まれていた。ラインアーサを始め、ハリとエミリオもジュリアンの元に駆け寄る。それでもジュリアンは顔を上げようとしなかった。

「何があったんです?」

「ジュリアン先輩!!」

 彼らの様子からして、何かあったのは間違いない。

「おい、ジュリ!」

 ラインアーサの喚声に漸く反応したジュリアンだが、項垂れたまま悔しさと怒りが入り混じった弱々しい声色で呟く。

「……すまない、アーサ。俺は、陛下に合わせる顔がない…」

「何があったんだよ」

「……本当にあっと言う間だった。俺たちの目の前でやられた…」

「っ!? やられたって、まさか…!」

「そんな! 先輩達の目の前で?」

「俺たちは何一つ出来やしなかった…っ」

 ラインアーサもエミリオも信じたくはなかったが目の前のジュリアンの様子からして、それは事実なのだろう。

「……被害者は?」

「旧市街にある飲食店の従業員で、住込みで働いていた少女だ。年齢は十七で内乱による孤児らしい」

「……?」

 ラインアーサは被害者の詳細を聞いて何処か違和感を覚えた。

「また内乱の被害者ですか……しかも今回は孤児を狙うなんて犯人の狙いは一体…」
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