《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「そういえばさ、さっき見てた夢の話しなんだけど。母上が死んだ日に…俺、一人の小さな女の子と出会ったんだ」
「それがどうかしましたか?」
ハリは無表情のままラインアーサを見上げる。
「あの日、俺は母上の死を受け入れることが出来なくて一人で落ち込んでたんだけど。その子のおかげで前に進む事が出来たんだ。……とても大切な物を貰ったから」
「何を、です?」
「───笑顔。その子は俺に笑顔の大切さと、〝ライア〟って言う呼び名をくれたんだ……気に入ってる。だから非公式の時には大抵そう名乗る事にしてるんだ」
今でも〝それ〟を思い出すとラインアーサの心は温かくなる様に感じた。
「……意外ですね。ライアは歳上好みなのだとばかり。初恋の相手は歳下の女の子でしたか」
「おい! どうしてそうなるんだ? 俺はただ、お前の感情の起伏が薄いから笑顔の大切さを教えようと……何だよ初恋って…」
「顔、赤いですよ」
「赤くないって!」
そう茶化されて、一気に顔が熱くなる。ラインアーサは少し乱暴に扉を開けて通路に出ると、荒々しく個室を出て行った。
「それがどうかしましたか?」
ハリは無表情のままラインアーサを見上げる。
「あの日、俺は母上の死を受け入れることが出来なくて一人で落ち込んでたんだけど。その子のおかげで前に進む事が出来たんだ。……とても大切な物を貰ったから」
「何を、です?」
「───笑顔。その子は俺に笑顔の大切さと、〝ライア〟って言う呼び名をくれたんだ……気に入ってる。だから非公式の時には大抵そう名乗る事にしてるんだ」
今でも〝それ〟を思い出すとラインアーサの心は温かくなる様に感じた。
「……意外ですね。ライアは歳上好みなのだとばかり。初恋の相手は歳下の女の子でしたか」
「おい! どうしてそうなるんだ? 俺はただ、お前の感情の起伏が薄いから笑顔の大切さを教えようと……何だよ初恋って…」
「顔、赤いですよ」
「赤くないって!」
そう茶化されて、一気に顔が熱くなる。ラインアーサは少し乱暴に扉を開けて通路に出ると、荒々しく個室を出て行った。