《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 アマランタの報告にその場に居た全員が耳を疑った。ラインアーサはもう一度事実を確認する。

「っ…アマランタ……本当なのか?」

 ジュリアンもラインアーサと同じ心境なのだろう、隣で瞳を見開いている。
 アマランタに状況を確認すると、被害者は果樹園を営む父子家庭の少女。歳は十五で内乱後にシュサイラスアに移り住んだ民である。
 昨日(さくじつ)から立て続けに狙われているのは、どうも未成年の少女ばかりだ。犯人像を考察していると、突然ジュリアンがラインアーサの両肩を掴み俯きながら謝罪を述べた。

「アーサ、本当にすまない。陛下が俺の事を今回の事件の警邏隊隊長に任命して下さったってのにっ! 一日で二人も被害者を…っ。俺はどう責任を取れば…」

「……なんだよ、そんな言い方お前らしくもない。今は責任を取ることよりも、一刻も早く一緒に打開策を考えよう。そっちの方が大事だろ?」

「ああ。そうだよな…!」

「しかし。犯人は何故未成年の少女ばかり狙うんだ? それも、内乱後にこの国へ移住してきた者ばかり…」

 ラインアーサはそこまで言うと、ある事に思い当たりはっと息を飲んだ。追い打ちをかける様にジュリアンが顔を上げ口を開く。
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