《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ハリにはスズランの事を一切話していない。自身の恋心さえ否定していた。それ故ハリに相談するなど気恥ずかしく、これまで話題にすら出さなかった。

「アーサ、スズランちゃんの事話してないのか?」

「……言ってない」

「何でだよ! じゃあ俺が説明しとくからさ、アーサはスズランちゃんのとこに急げよ!」

「あ、ああ。でもまた適当に余計な事まで…」

「何言ってんだよ! 緊急なんだぞ?」

 会話を聞いていたハリが怪訝そうな視線を送ってくる。

「…? 何の話です? こんな時に」

「まあ、あれだ。アーサの想い人も狙われるかもなんだ! 行かせてやってくれ」

「お、おい! ジュリっ!! 想い人とか言うなよ、知り合いだ……ちょっとした」

 ジュリアンの言葉に過剰反応してしまい、それは逆にハリの興味を引いたらしい。ハリと目線がぶつかる。

「ライア、想い人なんていたのです…?」

「……違う、いない」

 ラインアーサは首を横に振って見せた。

「嘘をつくな。好きなんだろう? いい加減認めて素直になれって! お前のこんなに青ざめた顔見た事ないぜ? それに、スズランちゃんが攫われてもいいのかよ!?」
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