《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
スズランがあの空間の裂け目に囚われてゆくのを想像し、ラインアーサはぐっと拳に力を込めた。
「そんなの……駄目だ。そんな事絶対させない!」
「だったら、ここは俺とハリに任せて早くスズランちゃんのとこ行けって」
ジュリアンが何故こんなにもラインアーサの色恋に世話を焼くのか分からなかったが、スズランの事が気に掛かるのは事実だ。彼女の身の安全が危ういのであれば、今すぐにでも駆けつけて守ってやりたいというのが本音だった。
「早く行って王宮で保護すればいい」
「……そうだな、今のところはそれが一番安全かもしれない。ハリ、ジュリ。ごめん俺行くよ」
「……」
何故か刺す様に感じるハリの視線を受け流し、ラインアーサはこの場所を後にした。
走り出た瞬間、鼻の頭に冷たい水滴が落ちてくる。
「雨か……」
雨はぽつり ぽつりと緩やかに地面に跡をつけていたが、あっという間に本降りになった。まるで行く手を阻む様な激しい雨足にも怯まず、ラインアーサはひたすら酒場へと疾走した。
「そんなの……駄目だ。そんな事絶対させない!」
「だったら、ここは俺とハリに任せて早くスズランちゃんのとこ行けって」
ジュリアンが何故こんなにもラインアーサの色恋に世話を焼くのか分からなかったが、スズランの事が気に掛かるのは事実だ。彼女の身の安全が危ういのであれば、今すぐにでも駆けつけて守ってやりたいというのが本音だった。
「早く行って王宮で保護すればいい」
「……そうだな、今のところはそれが一番安全かもしれない。ハリ、ジュリ。ごめん俺行くよ」
「……」
何故か刺す様に感じるハリの視線を受け流し、ラインアーサはこの場所を後にした。
走り出た瞬間、鼻の頭に冷たい水滴が落ちてくる。
「雨か……」
雨はぽつり ぽつりと緩やかに地面に跡をつけていたが、あっという間に本降りになった。まるで行く手を阻む様な激しい雨足にも怯まず、ラインアーサはひたすら酒場へと疾走した。