《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
頭からすっかりずぶ濡れになっている為か周りからの視線を浴びたが、ラインアーサはお構いなしに店奥のカウンターを目指す。入店した直後に店内をぐるりと見回したが、何処にもスズランの姿が見当たらない。
(スズラン! どこだ!? まさか既に……)
逸る気持ちを抑えきれずにラインアーサはカウンターにいるマスターへと声を張り上げた。
「マスターっ! スズランは、スズランは何処にいる!?」
カウンターに両手を着いてそう息巻くラインアーサにこの店のマスター、ユージーンが驚いた様子だが落ち着いた声で返答をくれた。
「おや、貴方様は…! うちのスズランがどうかなさいましたか? その前に、その様に濡れていては風邪を…」
「マスター! 今日一日何も変わった事は起きてないか? スズランは無事なのか?」
「え、ええ。無事も何も今、裏で空き瓶の片付けを…」
「裏庭っ!?」
ユージーンがそう言い終えたか否か、ラインアーサは勝手にカウンター奥手の部屋へと入ってゆく。
「困りますよ、いくら貴方様でも! そちらは私室になって…」
「悪い…。緊急事態なんだ。ここから上がらせてもらう!」
ユージーンの言葉はラインアーサの耳に届かなかった。
(スズラン! どこだ!? まさか既に……)
逸る気持ちを抑えきれずにラインアーサはカウンターにいるマスターへと声を張り上げた。
「マスターっ! スズランは、スズランは何処にいる!?」
カウンターに両手を着いてそう息巻くラインアーサにこの店のマスター、ユージーンが驚いた様子だが落ち着いた声で返答をくれた。
「おや、貴方様は…! うちのスズランがどうかなさいましたか? その前に、その様に濡れていては風邪を…」
「マスター! 今日一日何も変わった事は起きてないか? スズランは無事なのか?」
「え、ええ。無事も何も今、裏で空き瓶の片付けを…」
「裏庭っ!?」
ユージーンがそう言い終えたか否か、ラインアーサは勝手にカウンター奥手の部屋へと入ってゆく。
「困りますよ、いくら貴方様でも! そちらは私室になって…」
「悪い…。緊急事態なんだ。ここから上がらせてもらう!」
ユージーンの言葉はラインアーサの耳に届かなかった。