《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
スズランの言葉が棘の様に胸に突き刺さる。この言葉を理解するのに一瞬の時間を要した。が、すぐに自身が盛大に嫌われていると言う事実を思い出し、少しだけスズランの身体から離れた。それでもスズランの手首を掴むと目線を合わせ少しだけ微笑みかけた。
「…っ! お願い。その手を離して! わたし…っ」
「悪いけど嫌でも我慢してくれ。今この手を離す事は出来ない! 緊急事態なんだ、マスターとスズランに大事な話がある。頼むから俺と一緒に来てほしい……」
ラインアーサはスズランと瞳を合わせたまま丁寧に、ゆっくりとした口調で願い出た。
「緊急、事態…?」
「そう、緊急事態なんだ…」
こんな時だというのにスズランの不思議な色に煌めく瞳に魅入られ惚けてしまいそうだった。スズランもまた、ラインアーサから視線を逸らさないままでいる。
見つめあったまま暫しの沈黙が訪れた。
その間も冷たい雨は二人の身体を容赦なく打ち付ける。
「スズ!!」
叫びの様な呼び声に沈黙が破られると、その場にセィシェルが現れラインアーサは我に返った。
「…!」
「……セィシェル」
二人の間に弾丸の如くセィシェルが割込んでくる。
「…っ! お願い。その手を離して! わたし…っ」
「悪いけど嫌でも我慢してくれ。今この手を離す事は出来ない! 緊急事態なんだ、マスターとスズランに大事な話がある。頼むから俺と一緒に来てほしい……」
ラインアーサはスズランと瞳を合わせたまま丁寧に、ゆっくりとした口調で願い出た。
「緊急、事態…?」
「そう、緊急事態なんだ…」
こんな時だというのにスズランの不思議な色に煌めく瞳に魅入られ惚けてしまいそうだった。スズランもまた、ラインアーサから視線を逸らさないままでいる。
見つめあったまま暫しの沈黙が訪れた。
その間も冷たい雨は二人の身体を容赦なく打ち付ける。
「スズ!!」
叫びの様な呼び声に沈黙が破られると、その場にセィシェルが現れラインアーサは我に返った。
「…!」
「……セィシェル」
二人の間に弾丸の如くセィシェルが割込んでくる。