《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「先程のお返しですよ」
密やかにそう呟くハリの口元は僅かに緩んでいた。
「まったく! ハリのやつ、今日はやけに饒舌だな」
ラインアーサは通路の窓を開けると、勢い良く入ってくる少し冷たい風を思い切り吸い込んだ。
───初恋。
そう思ったことなど一度もなかったが、意識してみると案外そうなのかもしれないとも思った。
線路を走る列車の規則的な音と不規則な揺れ。ラインアーサは飛んでゆく景色を眺めがら、心を落ち着かせた。そして、通路の最奥にある〝特別室〟の扉を軽く叩く。扉がほんの少し開き、中から強靭な体つきをした護衛が現れる。ラインアーサは小声でその男に声をかけた。
「ご苦労様。少し中に入れてもらってもいい?」
「ええ。勿論です。どうぞ、お入りください」
男は一礼し、ラインアーサを中へと招き入れた。
───
──────
密やかにそう呟くハリの口元は僅かに緩んでいた。
「まったく! ハリのやつ、今日はやけに饒舌だな」
ラインアーサは通路の窓を開けると、勢い良く入ってくる少し冷たい風を思い切り吸い込んだ。
───初恋。
そう思ったことなど一度もなかったが、意識してみると案外そうなのかもしれないとも思った。
線路を走る列車の規則的な音と不規則な揺れ。ラインアーサは飛んでゆく景色を眺めがら、心を落ち着かせた。そして、通路の最奥にある〝特別室〟の扉を軽く叩く。扉がほんの少し開き、中から強靭な体つきをした護衛が現れる。ラインアーサは小声でその男に声をかけた。
「ご苦労様。少し中に入れてもらってもいい?」
「ええ。勿論です。どうぞ、お入りください」
男は一礼し、ラインアーサを中へと招き入れた。
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