《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
ユージーンが何時になく落ち着いた口調と真剣な眼差しでセィシェルを諭す。その様子にセィシェルは諦めたかの様に小さく息を吐いた。
「……わかったよ。親父がそこまで言うならよっぽどなんだな? 俺はとにかくスズを部屋に連れてく。ほら、スズ行くぞ!」
セィシェルがスズランのもう片方の手を引いて歩き出した。ラインアーサと軽く繋いでいた方の手が自然とほどける。
「…あ……!」
瞬間、スズランが縋る様な視線でこちらを見上げたのでラインアーサはその手を追う様に腕を伸ばす。しかし途中で諦め、引っ込みのつかない手を力一杯握りしめた。
セィシェルに連れられてスズランが酒場の中に入るのを見届けると、ラインアーサはユージーンに頭を下げた。
「ありがとう。マスター」
「おやめください…! 貴方様が私めに頭を下げるなど!!」
ユージーンは慌てて傘をラインアーサに渡すと、その場に片膝を着いて跪いた。
今更傘をさしても手遅れな程、ラインアーサの服とマントは雨水を含みずしりと重い。まるでラインアーサの今の胸中の様だが、そうも言っていられない。
「マスターこそやめてくれ!! それよりもマスターは俺の事知ってるのか…!?」
「……わかったよ。親父がそこまで言うならよっぽどなんだな? 俺はとにかくスズを部屋に連れてく。ほら、スズ行くぞ!」
セィシェルがスズランのもう片方の手を引いて歩き出した。ラインアーサと軽く繋いでいた方の手が自然とほどける。
「…あ……!」
瞬間、スズランが縋る様な視線でこちらを見上げたのでラインアーサはその手を追う様に腕を伸ばす。しかし途中で諦め、引っ込みのつかない手を力一杯握りしめた。
セィシェルに連れられてスズランが酒場の中に入るのを見届けると、ラインアーサはユージーンに頭を下げた。
「ありがとう。マスター」
「おやめください…! 貴方様が私めに頭を下げるなど!!」
ユージーンは慌てて傘をラインアーサに渡すと、その場に片膝を着いて跪いた。
今更傘をさしても手遅れな程、ラインアーサの服とマントは雨水を含みずしりと重い。まるでラインアーサの今の胸中の様だが、そうも言っていられない。
「マスターこそやめてくれ!! それよりもマスターは俺の事知ってるのか…!?」