《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 話を進めるごとにユージーンの顔ばせが蒼白になってゆく。やはりスズランがその条件全てに当て嵌まる事は、彼に言わずとも明白だ。

「マスター。この事件が解決するまで、絶対にスズランを一人にしないで欲しい。それとこの建物の外に出ても駄目だ。出来れば裏庭にも出てほしくない。事件は早期に解決する様、国をあげて調査するから……」

「話は分かりました。スズランには言って聞かせましょう。セィシェルにもなるべく一緒に行動する様にと伝えます」

 本当は王宮で保護したい所なのだが……。ああもスズランに嫌われてしまい気の重いラインアーサはなかなか切り出せずにいた。

「……もし、スズランさえ気にならないのであれば、王宮で保護と言う手も…」

「その必要は全くないね!」

 ラインアーサの説明を遮る様に、セィシェルが客間に入って来た。

「ああ、セィシェル…! スズの様子はどうだい?」

「あー。とりあえず雨にたくさん当たったから着替えをさせて、寒くない様にしてやった。あと少し寝ろって言ってきた。ここ最近ずっと寝不足だったみてえだし」

 セィシェルがじろりと視線をこちらへ寄越す。まるでラインアーサの所為だと言わんばかりに。
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