《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「いえ、私が例外なだけでございます。他の人々は貴方様がアーサ様である事には全く気付かれてはいないでしょう」

「じゃあ、何故…?」

 ユージーンの口振りにますます困惑する。

「……貴方様は、お母上のエテジアーナ様と良く似ていらっしゃる」

 更に突然母の名を口にされ、ラインアーサは眼を見開いた。

「母様……いや、母を知っているのか?」

「ええ…。私たちは身分は違えど幼馴染みの様な間柄でした故。それに私は曾て、宮廷料理師の仕入担当として王宮に仕えておりましたので」

「そうだったのか!」

 そう言われれば納得が行く。エテジアーナを知っているならば王子だと悟られても仕方がない程、ラインアーサの顔立ちはエテジアーナによく似ている。
 二人が幼馴染ならば何か知っているかもしれない。───不意にそう思い立ち、ラインアーサは半ば諦め半分に質問を投げかけた。

「……マスター。突然話を変えて悪いんだけど、母が持っていた特殊な力について…。何か知っていたら教えてほしい」

「…っ!!」

 途端にユージーンの表情が凍り付いた。

「その様子だと何か知ってるんだよな? どんな些細な事でも構わないから俺に教えてくれないか?」
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