《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「何から何までありがとう、マスター。あ、それと俺がこの国の王子だって事はスズランたちにはこのまま黙っていてくれると助かる。その方が街の中では動きやすいんだ」
「……仰せの通りに」
そう頷いたユージーンから受け取った赤い傘は、どう考えても女性向けのものだった。
「この傘は…?」
「返却は不要ですがもし返されるならスズランに直接どうぞ」
ユージーンはそう言いつつ意味深に微笑んで見せる。その微笑みをどう受け取ってよいかわからず、ラインアーサは苦笑を返した。
ユージーンに別れを告げ、裏口から外に出る。ラインアーサは早速傘を差して酒場の建屋を見上げた。意識を集中させ空に複雑な術式を丁寧に描き、建屋全体に風の護りの結界を張っていく。その途中、此処には弱々しいものの既に別の結界が張られていることに気が付いた。
「……以前誰かが張ったのか? まあ、用心の為に結界を重ねても問題ない筈だろう」
ラインアーサはそこまで強固な結界を張れる訳ではない。あくまでも防犯程度のものだ。ライオネルの様に魔像術自体を封じる程の強力な結界を張るには、さらに複雑な術式と膨大な精神力を要する。それを常に、王宮全体に張っているライオネル。
「……仰せの通りに」
そう頷いたユージーンから受け取った赤い傘は、どう考えても女性向けのものだった。
「この傘は…?」
「返却は不要ですがもし返されるならスズランに直接どうぞ」
ユージーンはそう言いつつ意味深に微笑んで見せる。その微笑みをどう受け取ってよいかわからず、ラインアーサは苦笑を返した。
ユージーンに別れを告げ、裏口から外に出る。ラインアーサは早速傘を差して酒場の建屋を見上げた。意識を集中させ空に複雑な術式を丁寧に描き、建屋全体に風の護りの結界を張っていく。その途中、此処には弱々しいものの既に別の結界が張られていることに気が付いた。
「……以前誰かが張ったのか? まあ、用心の為に結界を重ねても問題ない筈だろう」
ラインアーサはそこまで強固な結界を張れる訳ではない。あくまでも防犯程度のものだ。ライオネルの様に魔像術自体を封じる程の強力な結界を張るには、さらに複雑な術式と膨大な精神力を要する。それを常に、王宮全体に張っているライオネル。