《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ライオネルは常に、睡眠時間でさえも完全に気を休められずにいるという事だ。

「……父上、何故こんなに大事な事を隠してたんだ…! 母様の事。俺は知らない事ばかりじゃあないか!!」

 黒く渦巻く気持ちを抑えきれず、つい声に出していた。
 王宮へ戻ると真っ先にライオネルの元を訪ねた。しかし、側近のコルトからは不在だと言い渡されてしまう。次にイリアーナの元へ向かうも、姉は体調が優れないのだとリーナに門前払いを食らう。

「肝心なときに、なんだよ…! 二人とも」

 つい苛々とした感情が態度と口に出てしまう。

「アーサ様? どうかなさいましたか…?」

「いや、なんでもないよ。姉上にはお大事にって伝えておいてくれ。また明日にでも見舞いにくるよ」

「畏まりました。……あの、アーサ様もあまりご無理をなさらないでくださいね? 少し顔色が優れないようですので……」

 リーナが心配げにそうに声を掛けてくれた。

「ん。ああ、大丈夫だよ」

 ラインアーサはそんなリーナを安心させようと笑って見せる。しかし……。

「アーサ様はいつもそう仰って無理をなさるから心配なんです!」

 リーナが何時になく主張をする。
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