《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「もっと周りを頼ってくださいね? 兄だって何時もそう言っています。……それにあたしも、その、アーサ様の事心配ですから!」

 リーナの必死な姿に尖った気持が和らぐ。

「ありがとう。二人にはもう十分助けられてるよ! 感謝してる。じゃあ今日はもう休む事にするよ。おやすみ」

「おやすみなさ…っあ、アーサ様!」

 挨拶を交わし踵を返しかけたところで、リーナから呼び止められる。

「ん? どうした、リーナ」

「いえ、すみませんっっ! あ、あの…。これ、この間のお礼です!!」

 何故か慌てふためくリーナから手渡されたのは、三色菫の押花で作られた栞だった。

「綺麗だな。リーナが作ったのか?」

「はい! 以前選んでいただいた鉢植えのお花で作りました…。よ、よかったら使ってくださいっ!」

「俺、本当は礼をされる様な事してないんだけどな。でもありがとう、大事にするよ」

 苦笑しながら栞を懐へ仕舞うと、ラインアーサはリーナの頭に優しく手を置いた。

「今度こそおやすみ」

「っおやすみなさいませ…、アーサ様!」

 いつまでも恭しく頭を垂れるリーナに早く部屋へ戻るよう促し、ラインアーサも自室へと戻った。
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