《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
旧知の仲
旧市街、夕凪の都───。
そこには古く重厚感のある建物が立ち並ぶ。その一角にある、小さく古びた酒場のカウンター席にラインアーサは居た。
狭い店内の照明は薄暗く、客もまばらだ。客層もあまり良いとは言えない。そんな雰囲気の中、一つの話題が盛り上がっていた。今年の収穫祭が行われるか否かだ。
「───今年の収穫祭は開催出来ないだろうな」
「いやいや今年は王子と王女が帰国したんだろ? 無理にでも開くんじゃあないか!? 何たってこの国の王様は馬鹿の付くほどお祭好きなんだからな!」
「ぎゃっははは! そりゃ違えねぇ!!」
テーブルの席に着いている三人程のガラの悪い連中が品のない大声を出して盛り上がる。
「いやぁしかし今回の物騒な誘拐事件が解決しないと普通なら祝祭所じゃあない筈だがなぁ!」
「お祭りバカで親バカって専らの噂だもんなぁ、我らの国王様は! 今年は王子と王女が揃ってるんだ、盛大にやる方に賭けてもいいぜ!!」
ラインアーサはカウンター席で頬杖をつき、彼らの話に終始耳を傾けていた。
「あらあら、随分な言い様ねぇ。いいの?」
カウンターの中から落ち着いた声の人物が話しかけてくる。