《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……なんだかまだ信じられないわ。貴方があの小さかったアーサだなんて」
幼い頃は自分が見上げなければ目線が合わなかったが、今はイリアーナが見上げる側だ。
「十一年も経てば背くらい伸びるよ。姉上こそ最初は分からなかった、こんな素敵な女性に成長しているんだもの」
イリアーナの両手を取りラインアーサはにっこりと微笑んだ。
この旅で各地を回り、その土地の女性たちと甘い夜を過ごす事も少なく無かったラインアーサ。特に年上女性の扱いが達者だ。ハリ曰く、女性の敵。
「そ、そんなお世辞、何処で覚えたの? アーサ」
少し頬を赤らめたイリアーナは、ラインアーサから戸惑いがちに瞳を逸らした。
「姉上…? 何か心配事?」
「え、ええ…少し」
イリアーナは自分が攫われてしまった事により母の死を招いた事。そして何よりこの十一年の間、自国との連絡を一切取らず潜在していた事を気に病んでいるのだろう。だが、拐かしに遭った事はイリアーナの意志ではなく、その間実際に連絡を取る手段が無かったのだから気に病むことは無いのだ。しかし再会してからと言うもののイリアーナは自分に負い目を感じ続けている。
幼い頃は自分が見上げなければ目線が合わなかったが、今はイリアーナが見上げる側だ。
「十一年も経てば背くらい伸びるよ。姉上こそ最初は分からなかった、こんな素敵な女性に成長しているんだもの」
イリアーナの両手を取りラインアーサはにっこりと微笑んだ。
この旅で各地を回り、その土地の女性たちと甘い夜を過ごす事も少なく無かったラインアーサ。特に年上女性の扱いが達者だ。ハリ曰く、女性の敵。
「そ、そんなお世辞、何処で覚えたの? アーサ」
少し頬を赤らめたイリアーナは、ラインアーサから戸惑いがちに瞳を逸らした。
「姉上…? 何か心配事?」
「え、ええ…少し」
イリアーナは自分が攫われてしまった事により母の死を招いた事。そして何よりこの十一年の間、自国との連絡を一切取らず潜在していた事を気に病んでいるのだろう。だが、拐かしに遭った事はイリアーナの意志ではなく、その間実際に連絡を取る手段が無かったのだから気に病むことは無いのだ。しかし再会してからと言うもののイリアーナは自分に負い目を感じ続けている。