《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「何よ。まだ何か…っていうかバレバレだけどね。恋煩いでしょう? それとも、失恋かしら?」

 鋭い返しに危うく飲んでいた穀物酒を吹く所だった。図星を突かれたラインアーサは思わずそのままカウンターに突っ伏した。

「待ってくれ…。俺ってそんなに分かりやすいのか?」

「まあ、とても分かりやすいわね。嘘を付くのも苦手でしょう? 貴方の性格なんて知り尽くしてるもの」

 ヴァレンシアが不敵に微笑む。

「う…。ますます嘘を付けないな」

「まったく。四年もあれば多少人は変わるものよ? ライアったら本当素直なままなんだから」

「……素直か。もっと素直になってればよかったのかな」

 ───スズランを王宮で保護出来なかった事を、ジュリアンにはひどく責められた。何故素直にならないのだと。素直に今までの事も打ち明け、王宮で保護して堂々と守ってやればいいじゃあないか、と。自覚はしている。あと一歩が踏み出せない情けなさを。
 そんな状況でも幸いな事にラインアーサの張った結界、酒場(バル)の外にスズランは出ていない様で安堵する。

「本当に失恋なの? 貴方が振られるなんて俄かに信じられないケド」

「過去に俺を振った張本人が何言ってるんだよ」
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