《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「あら! 失礼ね。あの時はああするしか無かったじゃあないの。貴方にはやるべき事があって、そう仕向けたのは貴方の方でしょう?」

「そう、だけど。……今回は違うんだ!」

「何が違うの?」

 ヴァレンシアにじっと見つめられる。

「……純粋な相手に、どう接したらいいのか分からなくて、知らないうちにたくさん傷つけてしまったんだ。……嫌われてもしょうがない」

「はぁ…。私から見れば貴方だって十分純粋よ? 自分では気づいていないかも知れないけど」

 そう言ってにこりと微笑むヴァレンシア。

「俺が……純粋だって?」

「そうよ、民を思う純粋な心。争い事だって嫌いでしょう…?」

「違うよ。俺はただ、父の力になりたいと思ってるだけで…」

「困ってる人がいたら放っておけない癖に?」

「……」

 何もかも見透かす様な瞳にラインアーサは少し照れながらグラスを一気に煽って誤魔化す。

「もう…! そんなに一気に飲んで平気なの? 相変わらず弱いんでしょうに。程々にしたら?」

「いつまでも子供(ガキ)扱い? 俺だってあれから色々と成長したつもりなんだけどな」

 ラインアーサが少し不服そうにするとヴァレンシアは愉しそうに笑う。
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