《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「ふふ。ならどの位成長したのか見せて欲しいわね」

「からかうなよ」

「ふふーん。私は本気よ? じゃあ今ここで試しにキスでもする?」

「まったく。ヴァレンシアには本当敵わないよ…。冗談は抜きにして、はじめに依頼した事は忘れずに占って見て欲しいんだけどな」

「はいはい、わかってるわよ。この一連の事件の犯人像とその居場所だったわね? 本腰を入れて占うから少し時間を頂戴。何か分かり次第すぐ報告するわ」

 誘拐事件の解決への糸口を見付ける為に、ラインアーサは藁をも掴む思いだった。

「ありがとうヴァレンシア! それで、今回の報酬だけど…」

「別にいらないわ。昔の好でおまけしてあげる…。それとも、また昔みたいに一緒に夜を過ごしてくれるの?」

 ヴァレンシアと目が合う。
 澄んだ海の様な色の瞳が煌めく───。ヴァレンシアとは数年前、闇雲にイリアーナを捜している時に出会った。彼女の占いによって姉の居場所を掴んだ事をきっかけに、恋仲の様なひどく曖昧な関係だったのは過去の事。

「ヴァレンシア……俺は」

「ぷぷぷ! それこそ冗談よ!! 本気にしちゃって、ライアもまだまだね。ああ可笑しい!」

「っ…そんなに笑う事ないだろ!?」
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