《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
返しもせず使用するなど引いただろうか。いつでも返せるように持ち歩いていたなど苦しい言い訳に過ぎない。
「……少し歩くけど平気か?」
「え? ええっと、どこかに行くの? わたしそろそろお店に戻らないと…」
「今から城下街に戻るには時間が遅いし雨も強くて危険だ……この先に宿があるから取り敢えずそこへ行く」
このすぐ先に国が経営する老舗の宿が建っている。その宿の最上階にはラインアーサが自由に使える部屋が密かに設けられていた。とにかく一旦そこで着替えなどを済ませたい。
「い、いい。わたし一人で帰れるからライアはさっきの人の所に戻って…。デートの邪魔して、ごめんなさい……」
スズランの表情が曇るのを見て、ラインアーサは強く反論した。
「何言ってるんだよ! 未成年者には外出禁止令が出てるって言っただろ? そうじゃあなくてもこんな遅い時間に女性を一人で帰すわけ無いし…。そもそもスズランはどうやってここまで来たんだよ? あの酒場の場所だって、なんでお前が知って…」
思わず厳しい口調で一気に捲し立てた。びくりと怯えて肩を竦ませたスズランを見て後悔する。
「っ…ごめん。突然大きな声を出して…」
「……少し歩くけど平気か?」
「え? ええっと、どこかに行くの? わたしそろそろお店に戻らないと…」
「今から城下街に戻るには時間が遅いし雨も強くて危険だ……この先に宿があるから取り敢えずそこへ行く」
このすぐ先に国が経営する老舗の宿が建っている。その宿の最上階にはラインアーサが自由に使える部屋が密かに設けられていた。とにかく一旦そこで着替えなどを済ませたい。
「い、いい。わたし一人で帰れるからライアはさっきの人の所に戻って…。デートの邪魔して、ごめんなさい……」
スズランの表情が曇るのを見て、ラインアーサは強く反論した。
「何言ってるんだよ! 未成年者には外出禁止令が出てるって言っただろ? そうじゃあなくてもこんな遅い時間に女性を一人で帰すわけ無いし…。そもそもスズランはどうやってここまで来たんだよ? あの酒場の場所だって、なんでお前が知って…」
思わず厳しい口調で一気に捲し立てた。びくりと怯えて肩を竦ませたスズランを見て後悔する。
「っ…ごめん。突然大きな声を出して…」