《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「あの、さっきのお店の場所は……ハリさんって方がうちのお店に来て教えてくれました」

「ハリが!?」

 想定外な人物の名に混乱する。

「ライアは…。旧市街の酒場(バル)に通うから、もううちのお店には来ない…って言われて…。でもわたし、どうしてもライアに謝りたくて。それで無理を言って場所を教えてもらったの」

「そう、なのか」

 ハリが何を思ってこの場所を教えたのか意図が分からない。だが、ハリは護りの煌像術(ルキュアス)が得意だ。恐らくスズランにはそれが掛けられている。護りの煌像術(ルキュアス)は気配を消す効果もある。スズランが結界から出た事に気付けなかったのはその為か。だがそのお陰で無事にここへ辿り着けたという事になる。

「でもよかった…。ちゃんとライアに会えてこの間の事を謝れたし、ハリさんって方にお礼をしなきゃ……じゃあわたしは帰るね!」

「だから何言って…」

「突然来てごめんなさい。ライアはすぐに戻らないと恋人さんに誤解されちゃうよね…」

 再度無理して笑顔を見せるスズラン。

「ああもう! なんでそうなるんだよ。さっきから誤解しているのはスズランの方だ。あの人は……ヴァレンシアは恋人じゃあないよ。ああ見えても俺よりずっと歳上だし、一児の母なんだ」
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