《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「母様の事を気にしてるのなら、俺にだって非があるんだ。あの時……俺は何も出来なかった……それに! 姉上は被害者だ、連絡を取らなかったのだって他に理由があるじゃあないか!」

「違うのよアーサ、ちゃんと……ちゃんと話すわ。でも、お父様はこんなわたしの事を親不孝な娘だと思ってないかしら?」

 イリアーナの声が震える。

「そんな事、あの父上が考えると思う? それにこうして俺が迎えに来たのは姉上にとって迷惑だった?」

 イリアーナは全力で首を振りそれを否定した。同時に瞳から涙が零れる。

「だったら、姉上は何も心配しなくていいよ。帰ったらまず父上が離してくれないだろうし、しばらくはお祭り騒ぎになりそうだから覚悟しといて」

 そう言いながらラインアーサは優しくイリアーナの肩を抱き寄せた。

「ありがとう……アーサ」

「たった二人の姉弟なんだから当たり前だよ。それに、早く泣き止んで……俺、女性の涙には弱いんだ」

「まあ、アーサったら……ふふ」

 そんな言葉を微笑みながらさらりと口に出す弟を見て、イリアーナの心配事が一つ増えた。
< 26 / 529 >

この作品をシェア

pagetop