《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
列車の高架橋をくぐり抜けるとすぐに宿にたどり着く。
「少し此処で待ってて」
入ってすぐの広間の長椅子にスズランを座らせる。国営の宿は簡素ではあるが格式のある佇まいだ。古いが上品かつ清楚な内装で訪れる人々を気持ち良く迎えてくれる。ラインアーサは受付の傍らに控えていた年配女性の客室係に小さく尋ねた。
「ジル。上、使える?」
「勿論でございます。ライア様」
ジルと呼ばれたその女性は穏やかな笑みを浮かべながら応える。
「じゃあ、頼むよ。おいでスズラン」
「ではご案内いたします。こちらへ」
先導するジルとそれに続くラインアーサの後を、スズランが不安そうについてくる。
「ライア……ここって?」
「心配ないよ」
ジルに案内され、各階層へ移動するための大きな鉄製の籠に乗る。すると籠は一気に上昇し、宿の最上階に着くとともに小気味の良いベルの音を鳴らした。そうして最上階の、更に一番奥の部屋へ通される。
「どうぞごゆっくりと。何かございましたらいつでも御呼びくださいませ」
「ありがとう。じゃあ早速だけど着替えるから、濡れた衣類の洗濯を頼めるかな?」
「畏まりました、早急に」
「少し此処で待ってて」
入ってすぐの広間の長椅子にスズランを座らせる。国営の宿は簡素ではあるが格式のある佇まいだ。古いが上品かつ清楚な内装で訪れる人々を気持ち良く迎えてくれる。ラインアーサは受付の傍らに控えていた年配女性の客室係に小さく尋ねた。
「ジル。上、使える?」
「勿論でございます。ライア様」
ジルと呼ばれたその女性は穏やかな笑みを浮かべながら応える。
「じゃあ、頼むよ。おいでスズラン」
「ではご案内いたします。こちらへ」
先導するジルとそれに続くラインアーサの後を、スズランが不安そうについてくる。
「ライア……ここって?」
「心配ないよ」
ジルに案内され、各階層へ移動するための大きな鉄製の籠に乗る。すると籠は一気に上昇し、宿の最上階に着くとともに小気味の良いベルの音を鳴らした。そうして最上階の、更に一番奥の部屋へ通される。
「どうぞごゆっくりと。何かございましたらいつでも御呼びくださいませ」
「ありがとう。じゃあ早速だけど着替えるから、濡れた衣類の洗濯を頼めるかな?」
「畏まりました、早急に」