《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……スズラン、いいのか? 俺、これ以上は止まれない。嫌なら今のうちに…」

 スズランが目線を合わせたまま頬を染め、恥ずかしそうに頷いた。瞳は潤み、口づけした唇は赤く染まり今すぐにでも全てを奪いたくなる。

「ライア……わたし、あなたに伝えたい事が…」

 スズランが何かを言い出そうとした瞬間、部屋の扉を叩く音が鳴り響き邪魔が入ってしまった。

「……」

 ラインアーサはベッドから身を起こし外衣(ガウン)を羽織ると扉を細く開く。

「お早う御座います、ライア様。お着物の洗い濯ぎが完了しましたのでお渡しに参りました」

「ああ。ジルか、お早う。助かったよ。服はそこに掛けて置いてくれ」

「畏まりました。それと新しいお召し物も注文通りのものをご用意致しました。それでは」

 昨晩頼んでおいたスズランの服の洗濯が済んだのと、ラインアーサが新たに頼んでおいた服が届いたのだ。流石に露出の高い酒場(バル)の給仕服のまま街中を歩かせる訳にはいかない。

「スズラン、服が乾いた。でももしよかったらこっちの服を着てくれないか?」

「……え、どうして?」

 新しい衣服の入った袋をスズランに手渡すと、少し戸惑いながらラインアーサを見返してきた。
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