《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 通り過ぎる人々はイリアーナにもしや〝有名人のお忍び〟又は〝他国からの重要人物〟なのでは? と言った物珍しい好奇の目を向けていた。基本的に明るく、賑やか事を好む国民性のため好奇心旺盛な民衆が多い。
 イリアーナが堪らずラインアーサに着想を口にした。

「ア、アーサ! その……護衛はもう大丈夫じゃあないかしら?」

「あー・・・。姉上、今その名で呼ばれると少しまずい、かも」

「えっ!?」

 民衆の間でアーサと言えば〝他国へ留学中のアーサ王子〟しかいない。
 ラインアーサは姉を捜す旅へ出る名目上、国政を学ぶ為に隣大陸にある煌都(こうと)パルフェへ留学中(・・・)ということになっている。
 イリアーナも行方不明ではなく、郊外の別宅で病気の療養中の為に不在と国民には伝えてあった。
 国の王子や王女が不在とあれば国民の不安や混乱を煽りかねない為、差し当たっての措置である。

「アーサ? もしやアーサ王子が国に戻られたのですか!?」

 案の定、人混みの中から声が挙がった。
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