《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
その一声で益々停車場の通路が騒然となる。民衆の視線が一斉にラインアーサの一行に集まり、全く身動きが取れなくなってしまった。
ラインアーサは押し黙り、イリアーナは更に深く俯いた。
「あの……違っていたら申し訳ない。あなた方、いや、貴方様はもしやアーサ様では? その、後ろにいらっしゃる方は、まさかとは思いますが……イリア様ではありませんか?」
期待を込めた眼差しで、紳士風の初老男性がおずおずと声を掛けてきた。しかし、これ以上騒ぎを広めると収集が付かないと判断したハリがやんわりとそれを否定する。
「申し訳ないですが、人違いですよ。アーサ王子はまだ留学中と聞きましたし」
「そ、そうでしたな! ……こちらこそ本当に申し訳ない。そちらのマントの方が、以前収穫祭の時にお見かけしたアーサ様と雰囲気が良く似ておって……」
「そんな……アーサ王子に間違われるなど畏れ多いですよ。では連れの具合が悪いので先を急ぎます、失礼」
「とんでもない! 足を止めさせて悪かったね」
「いいえ……」
男性に一礼をするとまだ騒ぎの収まらない人集りから漸く抜け出して、停車場の建物の外へと急ぎ足で向かった。
ラインアーサは押し黙り、イリアーナは更に深く俯いた。
「あの……違っていたら申し訳ない。あなた方、いや、貴方様はもしやアーサ様では? その、後ろにいらっしゃる方は、まさかとは思いますが……イリア様ではありませんか?」
期待を込めた眼差しで、紳士風の初老男性がおずおずと声を掛けてきた。しかし、これ以上騒ぎを広めると収集が付かないと判断したハリがやんわりとそれを否定する。
「申し訳ないですが、人違いですよ。アーサ王子はまだ留学中と聞きましたし」
「そ、そうでしたな! ……こちらこそ本当に申し訳ない。そちらのマントの方が、以前収穫祭の時にお見かけしたアーサ様と雰囲気が良く似ておって……」
「そんな……アーサ王子に間違われるなど畏れ多いですよ。では連れの具合が悪いので先を急ぎます、失礼」
「とんでもない! 足を止めさせて悪かったね」
「いいえ……」
男性に一礼をするとまだ騒ぎの収まらない人集りから漸く抜け出して、停車場の建物の外へと急ぎ足で向かった。