《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「いや、そう言う訳じゃあ…。それにまだ紹介出来るかは分からないけど……」

「けれどアーサにそんな嬉しそうな顔をさせる女性だろう? 早く会ってみたいよ」

 そう言うとライオネルはまたこりと微笑んだ。
 直ぐにでも事件を解決させ、ライオネルとイリアーナに安心してもらわなければと言う気持ちもある。

「そうだ…! 父上。事件の犯人だけど、もしかしたらマルティーン帝国の…」

 ラインアーサが言いかけると同時に寝室の扉が開き、中から医術師のフロラが出てきた。

「イリアの様子は!?」「っ先生、姉上は!?」

 二人の声が重なる。
 フロラは二人に向かい柔らかく微笑むと、静かな口調で話し始めた。

「陛下に殿下! まずは、おめでとう御座います」

「!?」

「フロラ、一体……どう言う事なんだい?」

 ラインアーサも言葉の意図がわからず困惑する。しかしリーナが少し興奮気味に顔を赤らめた。

「フロラ先生! やはりイリア様は…」

「流石にリーナは薄々感じていたようだね…。イリア様は御懐妊なさっておいでですよ」

 そう告げられライオネルは長椅子(ソファー)から勢いよく立ち上がった。

「……懐妊!? そ、それは本当なのか?」
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