《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「って事はブラッド兄様との…!!」

 ラインアーサも立ち上がりイリアーナの恋人であるブラッドフォードの事を考えると自然と顔が綻ぶ。

「陛下、アーサ様。改めて、誠におめでとう御座います!!」

 エルベルトもリーナもイリアーナの懐妊に喜びの声をあげ、談話室は祝い情緒に包まれた。だがフロラが咳ばらいをし、落ち着き払った口調で続ける。

「しかし暫くは絶対安静にして下さい。栄養のある食事が大事です。それとあまりご本人に心労をかけないようにして下さいね! それから…」

 まだ説明中にも関わらず、ライオネルが突然抱きついてきた。

「っわあ!? なんだよ父上!」

「……すまないアーサ。とても、とても嬉しくて…!!」

「ん…。俺も嬉しい」

 ライオネルの瞳に光る物が見え、ラインアーサの瞳も潤む。

「油断は出来ませんよ! イリア様の体力はかなり消耗されているご様子です。安定するまでは決して安心出来ません」

「そうですね、絶対安静。今はこれが一番です。食事の栄養面は私、エルベルトにお任せください」

「ありがとうエルベルト。よし、ではアナの時と同様に当分の間めいいっぱい安静にさせよう」

「母様と……同じ?」
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