《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 警備員としてのラインアーサには懐いてくれていた筈のスズラン。だが、その態度に心臓がちくりと痛む。
 正体を明かすなら今しかない。そう決意した。恐らく、既にスズランも気が付いている筈だ。しかし……。

「警備さん…。警備さんは、アーサ王子……なの?」

「っ!?」

 スズランの質問に一瞬狼狽えてしまった。

「……やっぱり、、そう、なんですね…。今まで気がつかずとは言え数々のご無礼、本当にごめんなさい…!! もう、この森にも来ません」

「…っ! スズラン!!」

「離して、くださいっ!」

 腕の中からスズランがするりとすり抜ける。

「待てよ! こっち向けって!! 俺の話を聞いてほしい…!!」

 思わずスズランの手首を強く掴む。

「いや…! お願い離して!! ……わたし、今は何も考えられない…。ごめんなさいっ!」

「スズラン…!!」

 顔所か瞳すら合わせようとしないスズランに気持ちが焦り、苛立って無理やりにでもこちらを向かせたくなる。だがその時……。セイシェルと交わした言葉が脳裏に浮かんだ。

〝スズランの意思を尊重する〟
〝無理強いはしない〟
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