《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
核心
「───馬っ鹿だなぁ…!! もっとさ、こう上手い伝え方とか言う頃合いってあるだろ!? アーサ、お前本当に不器用だな」
「う…。確かにジュリの言う通り何も反論出来ない。だけど、俺はこの期に及んでもまだ諦めてないんだ…」
早朝───。弱く霧雨が降り、人数の少ない城下の街にラインアーサとジュリアンの声が響く。
「おう、その勢いだぜアーサ!! 今のお前の瞳、少し前のそれよりはずっといいって! この間まで生きの悪い魚みたいな顔してたからな」
「……それは少し言い過ぎじゃあないか?」
「今も大分酷い顔してるぜ? いや、でも瞳は曇ってないから心配ないな」
「悪かったな…。心配かけて」
ラインアーサが頭を下げ謝るとそれを見たジュリアンが肩を竦めた。
「お前に素直になれって言ったのは俺だけどさ、こうも素直だと少し気持ち悪いな…」
「……おいジュリ。お前完全に俺で遊んでるだろ」
「そんな事ないって。俺はアーサ殿下の忠実なる部下。だからな! …っくく」
「……はぁ…。お前に話した事自体が間違ってたみたいだ」
ジュリアンに相談した己が愚かだったとラインアーサは顔を顰めた。
「何怒ってるんだよ、アーサ!」