《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「別に怒ってない……」

「まあいいじゃん。アーサとスズランちゃん、俺はお似合いだと思うけどな」

「……」

「言い出すのが遅かったとは言え、まだ大丈夫じゃあないか? スズランちゃんも少し驚いただけだと思うぜ?」

「……そう、だといいんだけどな」

 少しおどけた態度のジュリアン。それがさりげなく気遣ってくれているという事は知っている。傷心のラインアーサにその心遣いが沁みた。

「で、アーサも恋を知って少しは成長したんじゃあないのか?」

「っ…なんだよ、それ!」

「だってお前さ、俺と昔花街に通ってた頃にだって色恋に興味無さげだったし。旧市街の占いおねーさんとだって割り切ってただろ?」

「……割り切ってた、ね…」

「俺だって一応心配はしてたんだぜ? イリア様の捜索が一番だったのはわかるけどあの頃のお前は無茶苦茶で正直、見てて辛かったからな…」

「……悪かったと思ってるよ。あの頃の事は自分でも反省してるつもりだ…。その旧市街の……ヴァレンシアにも当時は物凄く説教されたんだ」

「そうそう! あのめちゃくちゃ美女、ヴァレンシアさんね。そうだろうな、あのヒト割とお前に本気だったもん! お前は気づいてなかっただろうけど」
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