《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
────石畳みを進む馬車の車内はラインアーサの明るい声で溢れていた。
「アーサ殿下、専用通路の存在はご存知ですか? こちらを使えば安全に外に出ることが出来た筈なんですが…」
コルトが苦笑しながら先程の話題を振ってくる。
「私も列車の下車前に通用口を勧めましたよ……」
「だってさ、別に悪い事したわけでもないんだし堂々としてれば大丈夫かと思ったんだよ。いや、少し浮かれてたかな。でも久しぶりに活気のある民たちを観れて安心した」
普段から自国の土地や民と触れ合うのが好きなラインアーサは嬉しそうだ。
「何暢気なことを言ってるんですか。あの場で身元が割れれば揉みくちゃにされますよ? この国の民の元気の良さは陛下のお人柄と比例してますから、何かと騒ぎ立てるのが好きなんですよ」
そのきっぱりとした言い草に、ハリを除く三人が吹き出した。先程迄緊張した面持ちだったイリアーナまでもが、口元を抑え肩を揺らしている。
今日のハリは何かと多弁で驚いてしまう。普段はもう少し口数が少ないのだが……。久々の帰国にハリも安堵しているのだろうか。
「アーサ殿下、専用通路の存在はご存知ですか? こちらを使えば安全に外に出ることが出来た筈なんですが…」
コルトが苦笑しながら先程の話題を振ってくる。
「私も列車の下車前に通用口を勧めましたよ……」
「だってさ、別に悪い事したわけでもないんだし堂々としてれば大丈夫かと思ったんだよ。いや、少し浮かれてたかな。でも久しぶりに活気のある民たちを観れて安心した」
普段から自国の土地や民と触れ合うのが好きなラインアーサは嬉しそうだ。
「何暢気なことを言ってるんですか。あの場で身元が割れれば揉みくちゃにされますよ? この国の民の元気の良さは陛下のお人柄と比例してますから、何かと騒ぎ立てるのが好きなんですよ」
そのきっぱりとした言い草に、ハリを除く三人が吹き出した。先程迄緊張した面持ちだったイリアーナまでもが、口元を抑え肩を揺らしている。
今日のハリは何かと多弁で驚いてしまう。普段はもう少し口数が少ないのだが……。久々の帰国にハリも安堵しているのだろうか。