《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「完全に重症って訳か…」

「重症で悪かったな! 情けない話、自分でも驚いてるんだ…。今までこんな風に他の誰がが気になった事なんか無かった。自分がこんなにも欲深いなんて思って無かった…!! こんなの…」

 格好悪い。
 いや、それでも本音を晒してしまえば誰にも邪魔の入らない所でスズランを独り占めしてしまいたいのだ……。しかし、それは叶わない事だと解っている。

「そんなの普通だぜ〜? 誰だって好きになったらその相手のことを独占したくなるって!」

「……そんなものなのか…?」

「そんなもんだろ! ……だからこんな物騒な事件早く解決させようぜ!! そしたらお前はもう一度ちゃんとスズランちゃんに話すといい。で、今の気持ちをそのまま伝えれば上手くいくんじゃあないか?」

「……何を根拠にそんな事」

「だーかーらーさぁ! 二人はさ、もうどこからどう見ても両思いなんだって!! ったく、見てるこっちがやきもきするぜ。何で本人同士が気付かないんだよ……」

 まだ何かぶつぶつとつぶやいているジュリアンを尻目に、ラインアーサは掌で口元を覆い隠した。傍からはそんな風に見えていたのかと思うと今更ながら羞恥で顔に熱が集中してしまう。
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