《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 すれ違い様の隙をつき一人の男の腕を掴み上げる。

「ひぃっ?! 何だよあんた…!?」

「てめぇ…… 俺の連れに何してやがんだァ? ぁあ!?」

 威勢良く息巻くも二人組はラインアーサの顔を見るなり目を見開く。

「ひっ、こいつあの時の…」

「……ってめぇはこの間の…!!」

 だがそんな事よりも話の内容が聞き流せる物ではなかったのだ。

「お前たち。今何を話していた…?」

 ラインアーサは手に力を込めた。

「っ痛っててて! ぁ、兄貴! 早く助けてくれよぉ!! 腕があぁっ…!」

「おいアーサ。こいつらまさか!」

「ああ。以前街でスズランを…」

 ジュリアンに目配せをし、そこまで言いかけると同時に兄貴分の男が口を挟む。

「アーサだと…!? ちっ、その(ツラ)思い出したぞ……お前っ、この国の王子だろ…。道理で見たことがある訳だぜ」

「へ? 王子って、、あのアーサ王子っス? だとしたら俺たちヤバくねぇっスか? 兄貴ぃ!」

「質問に答えろ…! 今話していた内容を詳しく話せ!!」

 低く唸る様に再度問うも、兄貴分の男はにやりと笑みを浮かべた。

「はっ…! てめぇが王子だろうが二度も邪魔させねぇ、あの小娘はいただくぜ…。そして今度こそ手柄は俺らのモンだ…」
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