《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……?」

 何故かやけに大人しくなった男に不信感を抱く。

「ペンディ地区入り口付近にて怪しい男二人組を捕獲っと! アーサ。俺は一旦王宮に戻ってこいつらを今回の事件の重要な参考人として尋問するがアーサはどうする?」

「……ああ。俺も立ち会う」

「そうだな、例の廃屋敷についてもなんか知ってるだろ」

 だがそこで兄貴分の男が唐突に喉を鳴らす。

「何がおかしい…!」

「くくっ! 俺らを捕まえたって無駄だと思ってな! てめぇらの望むものは何も出てこないぜ? ……それにもう遅い。あの小娘はもうじき…」

「……どういう事だ!?」

 その瞬時。
 ラインアーサが以前酒場(バル)に張った結界に、ざらつく手応えを感じ取り息を呑む。

「!!」

「アーサ!?」

「ジュリ! その二人を頼む……。スズランが危ない!!」

 言うなりラインアーサは霧雨で湿った石畳みを蹴り、走り出す。感じ取った手応えはスズランが結界の外に出た時のものだと推測できる。ユージーンもセィシェルも、もう決してスズランを酒場(バル)の外には出さない筈だ。ただの間違いならばそれで良い。しかしラインアーサの不安は酒場(バル)に近づくにつれ膨らんでゆく。
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