《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「っ…守るって決めたんだ!!」
不安を押し込める様に街の中を急く。
漸く酒場が見えて来るが入り口の扉の前に数人の人影が確認出来た。やはり何時もと様子が違う。そして飛び込んできた光景に息を吐く間も無く声を張り上げた。
「──っスズラン!!」
しかし声は虚しくかき消される。
それでもその異常な事態に怯むわけにはいかない。通りの中央では空間が歪み、黒い裂け目がぽっかりと口を開けていた。今まさにその裂け目にスズランが向い立ち、どういう訳か一歩踏み出そうとしている。
「───行っちゃ駄目だ! スズ!!」
男二人に取り押さえられているセィシェルがスズランに向かって叫ぶ。しかしスズランは歩みを止めずにまた一歩裂け目に近づく。
空間の歪みの所為か、裂け目からの影響か辺りは砂埃が舞い上がっていた。
「わたしが行く事で誘拐事件が解決するんでしょ? ……なら行かなきゃ!」
「何馬鹿な事言ってんだ! そんなの嘘に決まってる! 何でスズが行かなきゃいけないんだよ!? それに…、すぐ警備隊が来る! それまで…」
「わたしだってあの人の……ライアの力になりたいの…! 事件が解決するならわたし…」
不安を押し込める様に街の中を急く。
漸く酒場が見えて来るが入り口の扉の前に数人の人影が確認出来た。やはり何時もと様子が違う。そして飛び込んできた光景に息を吐く間も無く声を張り上げた。
「──っスズラン!!」
しかし声は虚しくかき消される。
それでもその異常な事態に怯むわけにはいかない。通りの中央では空間が歪み、黒い裂け目がぽっかりと口を開けていた。今まさにその裂け目にスズランが向い立ち、どういう訳か一歩踏み出そうとしている。
「───行っちゃ駄目だ! スズ!!」
男二人に取り押さえられているセィシェルがスズランに向かって叫ぶ。しかしスズランは歩みを止めずにまた一歩裂け目に近づく。
空間の歪みの所為か、裂け目からの影響か辺りは砂埃が舞い上がっていた。
「わたしが行く事で誘拐事件が解決するんでしょ? ……なら行かなきゃ!」
「何馬鹿な事言ってんだ! そんなの嘘に決まってる! 何でスズが行かなきゃいけないんだよ!? それに…、すぐ警備隊が来る! それまで…」
「わたしだってあの人の……ライアの力になりたいの…! 事件が解決するならわたし…」