《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「ふぅん…。既に意識が戻ってイタのか」

「……誰だ、お前」

 警戒しつつ低く声を出す。

「へぇ! ソノ上口もキケルとはネ! 流石と言えばイイのか?」

「……誰かは知らないが顔を見せろよ」

 フードの男を鋭く睨みつけるも目元が隠れていて表情すら読み取れない。

「ザンネン…。今は自己紹介の時間じゃナイ。しかしコノ短期間で良く意識を取り戻せたモノだよ。攫ってきた娘達など未だ自分がダレなのかも分からぬ程に魔像術(ディアロス)の影響を受け、ロクに口もキケナイままナノに」

魔像術(ディアロス)の影響だと…?」

「ソウ…。空間をこじアケて無理矢理移動シテ来たんだ。慣れナイ者には大層堪えたダロ?」

 そう言いながらくつくつと肩を揺らす男。フードの飾りが一緒にシャラシャラと音を鳴らす。
 

「コレだからシュサイラスアの民は平和ボケでイケナイ。コノ程度で自我を失うナンてホント笑いが止まらナイヨ」

 男は再び肩を揺らす。
 ───ラインアーサは男の説明と口調で二つの解答を導き出した。一つはあの裂け目に入った時の不快感。それは空間を移動する魔像術(ディアロス)への免疫の無さ。自分自身、腕の刺青が痛まなければ未だ意識が戻っていなかったかも分からない。そう思うと不甲斐なさを認めざるを得ないが。
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