《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 もう一つは男のこの特徴的な話し方。この話し方には覚えがあった。

「……お前。マルティーン帝国の者だろ、話し方に覚えがある。しかも以前、会った事あるな…?」

「サアネ。ドウだったか…。サテ、そろそろお喋りの時間はオシマイ。次はボクの積年の恨みをオマエに晴らす時間だ」

「恨み? マルティーンの者に恨まれる様な覚えはない…! それよりも一連の誘拐事件、一体どういうつもりだ! 直ちに人質を解放してくれ!!」

「イイけど?」

 男はラインアーサの要求に対し、やけにあっさりと応える。

「…!?」

「ソコに居る自我を無くした人形タチに興味ナドない。丁度処分に困っていたトコロだ。その代わり……アーサ王子。オマエを人質とし、引き換えに例の娘の身柄を要求スル」

「……例の娘…、それはスズランの事か!?」

「フフ。ソウ、名をスズランと言ったか? ソノ、フリュイの娘。我々にはアノ娘が必要ナノだ」

「フリュイ…。スズランはやはりフリュイ公国出身なのか…?」

 つい疑問を口にする。

「……コレはケッサクだな! ナニも知らナイ間抜けナ王子よ。まさかアノ娘の価値も知らず今までシュサイラスアで保護シテいた訳ではアルまいな?」
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