《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「保護? ……スズランの価値…? 一体何を言って…」

「ナルホドね…。シュサイラスアの国王はヨホド秘密主義と見た。実の息子に真実を告げずにイルのダカラな。……敵を欺くは味方カラとはヨク言ったモノだ」

 男は薄い唇ににやりと笑みを浮かべ更に続ける。

「父親にサエ信頼サレてイナイのダロウ? 哀れな王子よ」

「っ…!!」

「おや、図星ダッタか?」

 この物言いにラインアーサの心臓が跳ねた。普段は些細な事に狼狽えなどしないのだが今は頭に血が上って行くのがわかる。しかし冷静さを欠かぬよう深く息を吐き男を睨む。

「っ…お前に父の何が分かる…!」

「少なくトモ、オマエよりは分かってイル。国王はオマエを憎んでイルからな。信頼サレるハズがナイ」

「っ…でたらめを言うな!」

 生まれて来てからこれまで、父王ライオネルに憎まれていた覚えなどない……。何時だって大きな愛情を感じながら過ごして来た筈だ。
 ───しかし母、エテジアーナの事はどうだろう。ラインアーサの知らぬ事実が最近になって発覚し疎外感を持ったばかりだ。だがそれも時間を取り、話し合うと約束したではないか。
 こんな事で、しかも他人の言葉で疑心暗鬼になってはいけない。
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